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一日に2回電話をすることはあまりないから、疑問に思ったに違いない。 「悪いな、何回も電話して。寝るところだったか?」 「ううん、大丈夫ですよ。まだもう少し起きてますから」 ううんという言い方が、とてつもなく可愛い。 隣に居たら、抱きしめてしまっているところだった。 「謝らないといけない事があってな」 「……なんですか?」 「……日曜日、仕事の人と会わないといけなくなった」 誤魔化していても仕方ないので、正直に言う。 やっぱり、事務長に言われた時、ハッキリ断れば良かったかなぁと、今更ながら後悔する。 けれど、事務長の頼みを無下にする事も、中々できない。 「……そうですか、日曜日なのに大変ですね」 「悪いな、せっかく約束してたのに」 「大丈夫です。違う日に穴埋めしてもらいますからね」 「それは勿論だ。絶対に穴埋めするから」 「はい。頑張ってください」 「……菜奈」 「どうしました?」 「……本当に仕事だから」 ふふっと笑う声がスマホ越しに聞こえた。
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