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「疑ってませんよ、別に」 「そうか。そりゃよかった」 「カレー食べたんですか?」 「いや、全然まだ」 「早く食べて、早く寝てくださいね。明日も仕事ですから」 「おう。菜奈も早く寝ろよ」 「はーい。また明日ですっ」 電話が切れて、虚無感に襲われる。 日曜日、会えないのかという思いが、独り言として、口から溢れ出た。 まあ、俺のせいだから自業自得ではあるけれど。 一度食事だけして、ハッキリ断って、ちゃんと告白しよう。 相変わらず、菜奈との電話は心地良かった。 仕事での菜奈は真面目で、きちっとして、プライベートの菜奈は、少し雰囲気が違って、可愛らしくて。 そのギャップが、俺は好きだ。 船田杏奈が、どんな大女優で美人だろうが、それは揺るがない。 俺は菜奈が好きだ。 次の日の夕方、会社に戻ると、タイミング良く菜奈がビルから出てくるところに遭遇した。 俯いていた菜奈は、ふと顔を上げたタイミングで、俺と目が合った。
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