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とりあえず、ナンパされて喜ぶ様子はなくて安心する。 菜奈に限って、そんなことはあり得ないと思うけど。 「菜奈がモテるようになって、ちょっと遠くに感じるよ」 「なんですか、それ。一番身近にいるじゃないですか」 実際、菜奈が遠くに感じる事が、ある。 どこかへ行ってしまうような、そんな感覚が時折襲ってくる。 「……そうだな。遠くて近い存在だな」 不思議そうに俺を見つめる菜奈。可愛いな、と心の中で呟く。 「何言ってるか、わかりそうでわかりません」 真顔でそういう菜奈がなんだか、面白かった。 「わからなくて大丈夫。日曜日、ほんとに悪いな」 「仕事なら仕方ないです」 「埋め合わせはちゃんとするから」 「そうですね、美味しい海鮮が食べたいです」 段々と俺に遠慮がなくなってきているのは気のせいだろうか。 遠慮がないのは、初めて二人で会った時からそうかもしれない。 「海鮮だな。よし、任せとけ」 正直、あまりそういう店には詳しくない。 後で道重に聞いておこう。
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