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「そしたら、私は帰りますね。友哉さんも、あまり無理せず早く帰ってくださいよ」 「おう、お疲れさん。また明日な」 菜奈が駅に向かって歩いていくのを見送る。 「何ぼーっとしてんだ」 声がする方を向くと、道重が立っていた。 「おお、お疲れさん」 「なんだ、誰かいるのか?」 俺が見つめていた方向を道重は見るけれど、菜奈はもういない。 「なんでもない、行こうぜ」 会社に向かって歩き出す。 「そういえば、この前高木さんとどうなったんだ」 「どうって?」 「ふたりで飲んでたろ」 「お前らが無理矢理ふたりにしたんだろ」 「お膳立てしてやったんだろ。何か進展あったのか?」 真っ直ぐ前を向きつつ、無言になる道重。 こいつ、わかりやすいな。 「……特にない。普通に楽しく飲んで終わりだ」 声のトーンが変わった。誤魔化そうとしている感じが伝わってくる。 「お前は、嘘つけないタイプだな。分かりやすすぎる」 「あぁぁぁもう!うるせぇな!なんかあったわ!悪いか!」
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