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「いいと思うよ、そっちの方が」
優しく微笑む雅樹。出会った頃より、落ち着いて大人の男性になったような気がする。
「ありがと」
少しのんびりした後、ショッピングモールを後にする。
雅樹の横は居心地がいい。
車内で会話はそこまで多くないけれど、横にいると安心する。
「今日はごめんね、無理矢理誘っちゃって」
帰りの車、静かなのはいつも通りだけど、なぜか少しいつもと違う緊張感があった。
「ううん。最近会えてなかったし、嬉しいよ」
「今日さ、楽しかった?」
あまり普段聞いてこない質問に、少し戸惑う。
「うん。楽しかったよ?」
楽しかったけれど、質問の意図が分からず疑問系になってしまう。
しばらくまた沈黙が続く。さっきまでとは違って、嫌な沈黙だった。
「駅前の所で大丈夫だよ」
「うん。いつもの所に止めるね」
もう暗くなりはじめていた。駅周辺の街灯が明るくなって、人はそれほど多くなかった。
「ありがと、ごめんね、いつも。送ってもらっちゃって」
「ううん。大丈夫だよ」
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