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「本当にごめん。許される事じゃないのはわかってる」
「もういいよ、大丈夫。ほら、早く戻らないと、駐車禁止で罰金取られちゃうよ」
まだ何か言いたげな雅樹だったけれど、もうこれ以上話すことなんて、私にはない。
「……ほんとにごめん」
謝るなら最初から二股なんてするなと声を大にして叫びたいけれど、気力が湧いてこない。
最後に再び謝った雅樹は、後ろを向いて歩き出す。
その後ろ姿が見えなくなるまで、その場で立ち尽くしていた。
別れた実感はまだない。
けれど振られたんだという事実が、少しずつのしかかってくる。
涙は不思議とでなかった。
多分この後家に帰っても、泣く事はないと思う。
雅樹は浮気をするタイプじゃないから、安心していたのかもしれない。
やっぱり私に魅力がないから、目移りしたんだ。
これからの事を考えると、涙よりもため息が出てきた。
「……いつまで見てるんですか、係長」
多分、砂利の音が聞こえた時だ。そこから係長にずっと見られていた。
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