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雅樹からは見えてないけれど、私からは見える位置に係長はいた。 隠れるのが下手だ。 「いや……まあ、覗き見するつもりはなかったんだ、ほんとだぞ」 確かにそういう趣味があるようには見えない。 「まあ、話してる場所が悪かったので、私のせいでもありますね」 「いや、これに関しては俺が悪い」 「……係長。今日は冷静に話ができそうにないので、また今度時間作ってください」 今日はもう疲れた。見られた以上係長にはちゃんと報告した方がいいような気はする。 けれど、それは今日じゃない。 「ああ、それは別にいいけど……」 それを聞いて、私は軽く頭を下げる。 「じゃあ、またご連絡します」 そう言って、家の方へと歩き出す。 今日は誰とも会いたくなかったし、話したくもなかった。 何も考えたくない。きっと、寝たら忘れる。 家に着くと、ゆらゆらと寝る準備を始める。 もう晩御飯を食べる気力はなかった。
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