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係長はお世辞が上手い。さすがにモテるだけはある。 ちょっと勘違いしてしまいそうになるもん。 「……傷心中の女性にそんな事言ったらダメですよ。勘違いしますから」 「……小嶋は、自分が思ってるより、いい女だよ」 運転中の係長は、前を見ながら話す。 「……いい女は二股されませんよ」 「違う。向こうの見る目がなかったんだ」 運転中の係長と、一瞬目が合う。 いつもと違う、係長の真剣な目に吸い込まれそうになる。 なぜだか、溢れそうになる涙を堪える。 本気で、真剣に話してくれる係長の言葉が、有り難がった。 「ありがとうございます。本音だと思って受け取っておきます」 「俺は嘘は言わない。特に小嶋相手だと、すぐにバレそうだしな」 「係長、嘘つくの下手なタイプですもんね」 「正直者だからな。嘘つくのなんて、下手な方がいいだろ」 「でもビンタしてた女性は、口がうまいから騙されそうとか言ってましたよね」 同様で、ハンドル操作が少しだけぶれて、横にふらつく。
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