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係長は、深いため息をひとつ吐いた。 「お前な、冗談でそういうこと言うなよ」 「こんなので狼狽えてたら、簡単に女の子に引っかかっちゃいますよ」 伝票を持ってお会計に向かう。少し心臓がドキドキしていた。顔、赤いと思う。 「ここは奢るからいいよ」 係長は私が財布を出そうとすると、それを止める。 「え、いいですよ。映画代も払ってもらったのに」 さっきの映画のチケットも払ってもらっていた。 全部奢ってもらうのは申し訳ない。 「割り勘は好きじゃない。それなら、映画館の飲み物とか奢ってくれ」 「あ、はい。わかりました」 そう言われると、引くしかない。全部奢ってくれると気がひけるので、どこか払わせてくれた方がよかった。 支払いを終えて、映画館に向かう。 係長の顔を見ると、憂鬱そうな顔をしていた。 「そんな顔してると、帰るって言いましたよね?」 「いやー、そんな事言ってもだな。怖いもんは怖いんだよ」 一番そういうの大丈夫そうな人なのに。 誰にでも弱点はあるもんだ。
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