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暗かった映画館が、もう一段階暗くなって、映画がいざ始まる。 確かに、怖かった。 係長があれだけ怖がってたので、あまり言わなかったけれど、私も怖いものは怖い。 得意なわけでもないので、目を背けたり、体をのけぞらせたり、色んなリアクションをする。 けれど係長はそんなの目に入ってない様子で、眉間に皺を寄せてじっとスクリーンを見つめていた。 時折うおっと声をあげたり、びっくりして椅子から落ちそうになったり。 隣に座る係長を見ている方が、面白いような気がした。 後半になって怖さもだんだんピークを迎えつつあるとき、係長も怖さのピークを迎えたのか、椅子の手すりにある私の手を掴んできた。 多分、無意識だった係長は思わず「あ、すまん」と謝ってすぐ手を離した。 「……怖かったら、私の手貸してあげてもいいですよ」 小声でそう言って、手を少しだけ係長の方へ伸ばす。 何も言わずに私の手を握る係長。 ああ、ヤバいどうしよう。自分から言ったのはいいものの、この状況は大丈夫だろうか。
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