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このドキドキは、今目の前のスクリーンで映し出されているホラー映画によるものなのか、それとも私の右手を包む係長の手のせいなのか。 結局、映画が終わるまで手を離すことはなく、エンドロールが流れ出したところで、パッと手を離した。 エンドロールが流れている間、達成感なのか、椅子からずり落ちそうなほど、深く座っていた。 照明が灯って劇場内が明るくなって、係長の表情もよく見えるようになった。 「終わりましたね」 右手がまだ熱い。心臓もさっきよりうるさい気がする。 「……終わったな」 係長は疲れ切った表情で言う。 「どうでした?」 「……怖かった」 シンプルかつ分かりやすい感想。確かに怖かった。 「仕事の為とはいえ、大変ですね」 「まあな……ただこれでやっと宮川さんに話が出来る。行くたびに観ましたか!?ってうるさかったから」 宮川さんとは恐らく得意先の人だろう。モノマネを交えながら話すけれど、似ているかどうかは分からなかった。 席を立って外に出る。ぼーっとしていたら、結局一番最後になってしまっていた。
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