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係長がキッチンで料理をしている姿は、あんまり想像できない。 「料理はどう頑張っても無理だ。何をしても不味くなるからな」 不器用な係長を想像すると、面白かった。 「今度作ってお裾分けしますよ」 「いいのか?」 「はい。ご近所さんですから」 簡単に約束をしてしまったけれど、大丈夫だろうか。 このまま係長と近づけば近づく程、後戻りできない怖さが襲ってくる。 後悔しないだろうか、なんて考えるけれど、今更どうしようもない。 「じゃあ……楽しみに待ってる」 微笑む係長は爽やかすぎて、眩しい。 さっきの子どもっぽい姿とは違って、大人な一面だ。 「期待しないでくださいね。プレッシャーに弱いタイプですから」 「失敗する小嶋もちょっと見てみたい気はするけどな」 「……性格悪いですよ」 楽しそうに係長は大きく口を開けて笑っていた。 私は本来、こんなにお喋りじゃない。 友達と遊んでいても、どちらかといえば人の話を聞いているタイプだ。 けれど係長といると、会話が楽しい。雅樹といてもあまり無かった感情だ。
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