境界線

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 目覚めて泣いているのはもう何度目だろうか。  最近はめっきりそれも減ったというのに。  逃げても逃げても逃げても、最後に必ず捕まってしまう、あの夢。 「アキ、まだ5時だよ」    起き上がろうとして絡めとられた彼の腕の中。 「ごめん、起こしちゃった?」  向きを変えたら私の顔を覗き込んで。 「また、泣いてる」  指の腹で優しく私の涙を拭きとってからキスをしてくれた。 「陽向(ヒナタ)、……温めて?」  お願い、温めて。  それは合図、ハジマリの。   「欲しがりだね、アキは」  笑いながら私の首筋に口づけて、その唇は体中をくまなく愛撫する。  行為をしている時が一番好きだ。  自分らしくいられる気がする、人間でいられるような。  行為そのものではなく孤独を忘れられる時間が好きなのだ。  自分以外の体温と混じり合えるこの一瞬の時間で、私はアレから逃れられている気がするの。  依存症なのか、とも思ったことがある、けれど。  多分そうではない、私が欲しがるのは。  夢を見て泣いた時ばかりだから。  誰かを愛さずに自分は愛されたいだなんて、強欲かもしれない。  だって陽向は彼氏でも何でもないのだ。
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