51人が本棚に入れています
本棚に追加
目覚めて泣いているのはもう何度目だろうか。
最近はめっきりそれも減ったというのに。
逃げても逃げても逃げても、最後に必ず捕まってしまう、あの夢。
「アキ、まだ5時だよ」
起き上がろうとして絡めとられた彼の腕の中。
「ごめん、起こしちゃった?」
向きを変えたら私の顔を覗き込んで。
「また、泣いてる」
指の腹で優しく私の涙を拭きとってからキスをしてくれた。
「陽向、……温めて?」
お願い、温めて。
それは合図、ハジマリの。
「欲しがりだね、アキは」
笑いながら私の首筋に口づけて、その唇は体中をくまなく愛撫する。
行為をしている時が一番好きだ。
自分らしくいられる気がする、人間でいられるような。
行為そのものではなく孤独を忘れられる時間が好きなのだ。
自分以外の体温と混じり合えるこの一瞬の時間で、私はアレから逃れられている気がするの。
依存症なのか、とも思ったことがある、けれど。
多分そうではない、私が欲しがるのは。
夢を見て泣いた時ばかりだから。
誰かを愛さずに自分は愛されたいだなんて、強欲かもしれない。
だって陽向は彼氏でも何でもないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!