境界線

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「陽向、そろそろ家に帰りなよ? お母さん心配してんじゃないの?」  だって4年生とはいえまだ大学生だ。  就職先もいいところに内定している将来有望の男の子が。  私みたいな女のところに入り浸ってるのはよろしくない。  この町に越してきて半年、陽向と飲食店のバイト先で知り合って5か月。 「う~ん、そうだね、一回帰って着替えだけ取って来ようかな、やっぱ寒いし」 「いや、しばらく帰りなって。一人息子でしょ? 親が寂しがるよ」  そうして、そのまま戻って来なければいいのに、そう思うのだ。  孤独を好むわけじゃないの、ただ誰かと一緒にいることに慣れたくはない。  陽向は最初こそ家に帰ったりしていたけれど、気付けば(うち)に住み着いている、8月の終りから。 「オレが寂しいの、アキといないと」  甘えるように私の背中から抱き着く陽向に。 「今日帰らないともう家に入れてあげない」 「鍵持ってるからいいです、勝手に入ります~!!」 「鍵換えておくよ」 「どうして、そうイジワル言うの」  ぎゅうっと抱きしめるその腕が苦しいの。  境界線をいつの間にか超えた君の愛はただ優しすぎるのだ。
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