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◇◇◇  18歳で初めて付き合った人は30歳の人。  担任だった。  すごく優しくて大人で私は夢中になって、のめり込んだ。  彼も同じだった、私しか見えていなかった。  最初は同情だったかもしれない、片親の私の寂しさに寄り添ってくれた。  それがいつしか私の片恋へと応えてくれて。  結果、お互いしか見えなくなってしまった。  高校を卒業する前に私たちのことは学校中に知れ渡る。  彼は職を失い私は学ぶ場を追われて逃げた、誰も知らない町へ。  そんな愛がハッピーエンドだったか、なんて100人中99人がそんなわけないだろうと笑うだろう。  そう、そんなわけがないのだ。  彼は人が変わってしまった。  全部悪いのは私だと。  泣いては怒る、怒鳴る、そして。  私は日々身体中に痣を増やして。  20歳の誕生日、私は彼から逃げ出した。 「アキが悪いんだよ」  泣きながら笑うから、きっと私が悪い。 「アキを思ってだったんだ」  翌日には優しく抱きしめてくれるから、やっぱり私が悪かったんだって。   「アキちゃんは何も悪くないよ、一緒に行こう」    抱きしめてくれたバイト先の先輩の元へと私は逃げ出した。 ◇◇◇
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