1年2組

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1年2組

 初めてのことは誰だって緊張する。失敗してこい。そしたら強い人間になれる。  父の口癖だ。昨日の電話でも同じことを言われた。  俺は教室の前の廊下で深呼吸した。  扉の向こうから、互いを探り合う会話が聞こえる。  よし、行こう。  扉を開く。  教室中の目が一斉にこちらを向いた。  痛いほど視線を感じる。俺は教壇に立った。前を向く。息を吸う。 「一年ニ組のみんな、入学おめでとう。担任の白石秀介(しらいししゅうすけ)です。担当教科は国語。一年間よろしく」  一息で言い切った。教室の端から端まで見渡す。  強張った顔で俺を見ている生徒が多い中、一人だけ、目を見開いてこちらを凝視する生徒がいた。  俺から見て左の列、後ろから二番目の席。  座席表と照らし合わせ、名前を確認する。  染川真美(そめかわまみ)。  見覚えのない名前。でもどこかで見たことがあるような。  座席表から目を離し、顔を上げると、彼女はもう俺を見ていなかった。頬杖をつき、壁の掲示物を眺めている。  その横顔。どこかで……。
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