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職員室前の廊下
「白石先生」
その日の昼休み、トイレに行くために職員室を出たところを呼び止められた。声がした右側に顔を向ける。
「染川か。どうした?」
俺の目をまっすぐに見据える染川が少し怖かった。
嫌な予感がする。俺は身震いした。
「聞きたいことがあります」
「国語の質問?」
「いえ」
真剣な表情の染川を見て、心臓が大きく脈打った。平静を装い、ゆっくり発声する。
「じゃあ何?」
「ここでは言えません。放課後、時間をください」
「今じゃだめ?」
「二人きりの方がいいと思いますよ。先生のためにも」
染川がうっすらと笑みを浮かべ、小声で言った。
俺は眉根を寄せる。
「わかった。国語準備室を使わせてもらえるように、他の先生に頼んでみる」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げると、染川は足早に教室へと戻っていった。
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