国語準備室

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国語準備室

 国語準備室は扉の正面に窓がある。夕日が部屋全体をオレンジ色に染めている。薄雲が一筋流れ、夕暮れの寂しさを更に引き立てていた。  ノックの音が聞こえ、返事をすると、ゆっくりと扉が開いた。染川が姿を見せる。 「どうぞ、座って」  部屋の隅に積んである丸椅子を二つ持ち上げ、染川の前に並べた。 「ありがとうございます」  染川が俯きながら腰掛ける。俺も向かい合うように座った。早鐘を打つ心臓を落ち着かせるため、深呼吸してから尋ねる。 「俺に聞きたいことって何?」  染川は俺の顔を見て、視線を落とした。スカートの上で軽く握った拳を見つめている。染川がわずかに唇を動かしたが、思い直すように再びきつく閉じた。  俺はため息をつきそうになるのを(こら)えた。吸い込んだ息は静かに鼻から吐き出し、立ち上がった。染川に背を向け、窓際を目指す。  窓までたどり着いたところで、声が聞こえた。 「先生は、色摩司(しかまつかさ)という名前に覚えはありませんか?」  緊張が滲み出た、硬い声だった。俺はそのままの体勢で答える。 「俺の友人だ。なんで染川が知っているの?」  返事はない。緩やかに振り返ると、染川が立って俺を見ていた。
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