国語準備室

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 夕日が差す部屋の中、俺は一人残された。  右の手のひらで両目を覆い、首を上に向けた。共有した二つの秘密について考える。  こんな時、田中先生ならどうするのだろう。相談してみようか。いや、でも。染川の気持ちを、二人だけの秘密を、他人に打ち明けても良いものか。  学生時代は何も気にしなかった。「相談してもいいか」なんて、つまらないことで悩んだりしなかった。悩むくらいならとりあえずやってみて、ぶつかって、失敗して、それでも楽しかった。  俺は手を下ろして、窓の外を見やった。  橙色に染まるグラウンド。野球部の練習風景が見える。校舎のどこからか、楽器の音色が聞こえる。  青春の音だ、なんて柄にもないことを考える。
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