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田中先生の足元を見つめながら口を開く。
「心配事というか、迷いがあります」
田中先生がゆっくりと振り返り、俺を見た。
「僕は大人になれているでしょうか」
「大人、ですか?」
田中先生は俺の言葉を繰り返した。
「高校生の頃は、成人すれば大人になるものだと思っていました。でも、そうはならなかった。どうしたら大人になれますか?」
田中先生が何も言わず、俺に近付いてきた。俺は話を続ける。
「僕には夢がありました。でも、夢を見るのは子供の特権だと親に言われ、自分でも納得していたんです。ですが、生徒と話してみて、やっぱり未練があることがわかりました。でも、教師の仕事にも少しずつ面白みを感じてきているので、どちらを取るべきか迷っています」
「そうですか」
田中先生が俺の右隣に立った。窓の外を見て微笑む。
「青春、ですね」
視線の先には、バッティング練習をする野球部の姿があった。
「ああ、そうですね。羨ましいです」
田中先生が首を捻って、俺を見た。
「白石先生のことですよ」
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