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再び1年2組
入学式から一ヶ月が経ち、俺も生徒もある程度慣れてきた頃。
四時間目、一年ニ組の教室で、俺は黒板の右端に「羅生門 芥川龍之介」と書いた。
「今日から新しい単元に入る。教科書を開いて。俺が本文を読むから、みんなは形式段落に番号を振ってくれ。読み終わったら全部で何段落だったか聞くからな。あと、意味段落はいくつなのか考えながら聞くように」
全員が教科書を開いたのを確認して、教壇の真ん中に立った。CDを再生しても良いのだが、俺は自分で読むことにしている。
左手で教科書を持ち、息を吸う。
「ある日の暮方の事である。一人の下人が羅生門の下で雨やみを待っていた」
視線を感じる。
「広い門の下には、この男のほかに誰もいない。ただ、所々丹塗の剥げた、大きな円柱に、蟋蟀が一匹止まっている」
読み終わった文の句点に人差し指を乗せ、教科書から一瞬目を離す。
見当をつけた方向に顔を向けると、ばちっと目が合った。やはり染川だ。
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