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「先生……?」
学級委員長の葉山優の声で我に返る。いつの間にか音読をやめていたようだ。
「ごめん。ちょっとぼーっとしてた」
「先生しっかり!」
「どうかしたんですか?}
口々に言ってくれる生徒。いい子たちだなあと思う。
俺に向けられる心配そうな視線の中に、染川のものを見つける。
「大丈夫。ありがとう」
咳払いをし、教科書に視線を戻した。
「旧記によると、仏像や仏具を打砕いて、その丹がついたり、金銀の箔がついたりした木を、路ばたにつみ重ねて、薪の料に売っていたと云う事である」
だめだ、授業に集中しよう。音読中は教科書から目を離さないことに決め、残りの時間を過ごした。
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