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⒈ 告白
ゴールデンウィーク最終日。長い髪を二つに結んだ赤メガネの女の子が、緊張した面持ちで通学路を歩いている。
この女の子は、羽後舞莉。吹奏楽部に所属している中学二年生だ。
舞莉のスクールバッグから聞こえてきた、明るくハキハキした声。実は舞莉にしか見えない音楽の精霊である。この声はパーカッションの精霊・カッション。
その後に聞こえてきた落ち着いた声の主は、同じく音楽の精霊でバリトンサックスの精霊・バリトンだ。
『今日からパーカスか……。』
昨年、吹奏楽部に入った当初はパーカッションパートだったが、先輩からいじめられてサックスパートに移動した。そしてゴールデンウィークに入ってすぐに、顧問からあることを言われてしまったのだ。
舞莉の吹いているバリサクを、借りていた中学校に返さなければならないことを……。
吹く楽器がなくなったため、またパーカスに戻ってきたというわけだ。本格的に活動していた(一ヶ月以上)という点では、舞莉は部内唯一の管楽器と打楽器を経験しているということになる。
『うん、今日からはこっちだね。』
舞莉は準備室を通って、音楽室への扉をそっと開けた。
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