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三皿目「笑顔」
「あ〜腹減った。親父の店でも行くか」
23になったばかりで、仕事探しの真っ最中の優希。
だが、なかなか仕事先に受け入れて貰えない。経験がないというのも採用されない理由の一つだと思うが、1番の原因が反抗的な態度をとってしまうことなのは自分でも痛いくらいに承知している。どうしても素直に相手に接することが出来ない。だが、一応頑張ったし、笑顔もやってみた。そしたら
「君笑顔怖いよ?口も悪いし。そんなんじゃ務まらない。ごめんけどそういうことで」
どこに行っても似たようなことを言われ、今に至るわけだ。
そんなことを考えながら、親父の店につくと扉を開けて
「よお。親父、飯食いに来た。」
「おっ!優希じゃないか。どうだ、就職活動は上手くいってるかい?笑顔が大事だぞ〜?」
「わーってるよ、んな事。でも、仕方ねぇだろ…」
「まぁな、でも俺はいつでも応援してるぞぉ!」
「あぁ、ありがとよ。」
俺がどうして普通に、笑えないかは親父は知っている。
俺が小5の時、大好きだった母さんが車に轢かれて死んだ。運転手のクソ野郎は飲酒運転だった。あの日母さんが買い物に行かなければ、今でも…俺のせいだ。
あの日、欲しい菓子があると俺は言った。
「じゃあ買い物のついでに探してくるね。お留守番
よろしくね優希。」
と言って母さんはそのまま…
それから俺はショックが大きすぎて、それと同時に素直に笑えなくなってしまった。でも、こんな過去のことをいつまでも悩んでいたら何も変わらないと思い、最近笑顔の練習をしている。がなかなか成長が見られない。
はぁ…。
「おーい、優希?出来たぞ。冷めないうちに食べな。」
「おう。って、これ親子丼…親父、こんなん作ってくれた ことねぇのに。」
「いや、たまには親子丼でも作るかと思ってね。応援の意味も込めてだ。」
「そこは、カツ丼じゃねぇの?まぁいいか、いただきます。」
一口食べると、俺は涙をこぼしてしまった。
だってこれは…母さんの味だ。少し半熟で甘い玉子も優しい味のつゆも。どうして親父が…
「なぁ、親父…この親子丼って…母さんの」
「あぁ、そうさ、早苗さんのレシピだよ。教えて貰ってたのを、急に思い出してね。おい、そんなに泣いちゃあ、早苗さんが心配するぞ?笑顔が素敵な優希に戻らないと。」
「あぁ…そうだな。母さんに心配かけるよな。
ありがとよ親父」
優希はあの頃のように笑う事ができた。親父が作ってくれた母さんの親子丼のおかげで。俺はこれからも諦めずに頑張ろうと思う。
「親父、ごちそうさま。次ここに来た時には、仕事、結構大変だけどやりがいがあっていいぜって言ってみせるからな。」
「おう。それでこそ優希だ。約束だぞぉ!頑張っておいで。」
「おう!」
俺は親父の店を出た。
明日から俺は、親父との約束を果たすために、それと天国の母さんに俺、頑張ってるぜって所を見守ってもらうために明日からまた就活活動に専念しないとな!
俺は母さんのいる青い空を見あげた。
その顔はとびきりの笑顔だった。
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