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プロローグ
「手を伸ばせ! 蘭!」
猛は叫んだ。
精いっぱい手をさしのばす。
でも、遠い。あと少しで届かない。
「猛さん……」
蘭の目に恐怖が浮かぶ。
目の前に暗黒のブラックホールが迫っている。
もし、このまま落ちてしまえば、二度と蘭に会えない。蘭は巨大ブラックホールの超重力にまっさかさま。どこか遠い見知らぬ銀河になげだされ、ひとりぼっちでさまようことになる。
残酷なのは、それでも蘭が死なないだろうということ。
蘭は不死。
どんなことがあっても死なない。
ふつうの人間なら瞬時に溶けくずれるような、すさまじい環境のなかだろうと。
永劫の苦痛のなかを一人でさすらうのか? 蘭が? おれの蘭が……。
いやだ。そんなのはイヤだ。
それくらいなら、おれが死ぬほうがいい。
方法はまだある。
猛は最後の賭けに出ることにした。
ただ、問題が一つある。
今ここに蘭が二人いるということだ。
(どっちがほんとの蘭なんだ?)
最悪の二者択一。
まちがえることは、絶対にゆるされない……。
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