⑬ 僕にも思い出を頂戴

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「僕にもピアノ聴かせてよ」 「目立つだろうが。お前は捕まりたいのか」 現時点でこれだけ目立てば今更なのだが抵抗がある。 男が瞬きをする。 照明を映し濃い茶色の瞳が煌めく。 ――容姿だけでも目立つのだが、言動がさらに注目を集めている有様だ。 心配するだけ無駄だ。 「君の立場だと僕が捕まった方が有り難いんじゃないの?」 「それは……」 しかし此処で錦がピアノを弾けば、 もしも男が逮捕された時に彼にとって有利な証言証拠になるかもしれない。 それでも誘拐には変わりないのだから、彼が犯罪者である事実は覆らない。
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