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青い空の下、始めて写真を撮った向日葵畑での笑顔を思い出した。
夕焼けの美しい海で、夏の思い出と貝殻を差し出した声の優しさに胸が軋む。
男が口にする思いで作りは何時だって錦自身の記憶に対してで、男個人の記憶に対するものはごくわずかだった。
錦と共有するのではなく、男だけの物として望まれたのは初めてではないか。
「――発表会で他の子供にも聞かせたなら僕にもサラバンド聴かせてよ」
「如何いう理屈だ」
ここまで望まれると逆に演奏し難い。
照れと男に対する恥じらいだ。
――ピアノ位弾けば良い。
これ位の望みなら簡単ではないか。
きっと、何年経とうと名前も知らない男と過ごしたこの夏休みを錦は忘れないだろう。
男の声も笑顔も手の温かさも忘れない。
男にもしも欠片でも錦の記憶を残せるなら――それならば、ピアノ演奏などささやか過ぎる望みではないか。
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