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「それでも良い」
完成度の高さも技術も求めてはいない。
聴きたいのは男が弾くピアノ演奏だ。
「僕は君のピアノが聴きたいんだけど」
「お前の演奏を聴かせて欲しい」
「連弾したいな」
「……分かった」
「僕は楽譜見ながら、適当に遊んでいただけだから。指もばらばらでテンポも不正確だよ。おまけに暫く弾いていない。君の足を引っ張るかも」
男が意味ありげに見つめてくる。
只では弾かないと言うことか。
彼の表情が交換条件を迫っている。
「練習していないなら俺も同じだ。――…大したものは弾けないぞ」
「そうこなくっちゃ」
男が嬉しそうに笑った。
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