⑭ 時が止れば良いのに

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 演奏を終えると「素晴らしい。本当に君は素敵な子だね。最高だ」と褒めながら拍手をしてきた。 「次はお前の番だぞ」 「えー錦君もっと弾いてよ」 「俺に恍惚を味わわせるんだろ。早く弾け」 「何かエッチするみたいな台詞だな」 「早く」 「錦君がおねだりしてくれたなら応えないとねぇ」  錦は席を譲りその傍らに立つと男が唇を尖らせ「離れたらヤダ」「勝手に席外した酷い」と駄々を捏ねる。  冷やかに見下ろしても駄々は続く。  一通り駄々を捏ねた後、長い指を鍵盤に添えて愛撫するように滑らかに演奏を始める。
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