⑭ 時が止れば良いのに

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「鼻歌の所為で曲が良く分からなかった。もう一曲弾いてくれ」  彼の演奏を終わらせたくなくて我儘を言った。  寂寥感を振り払い何かを言い返される前に、思いついた曲名を口に出す。 「ジュ・トゥ・ヴが聴きたい。弾けるか?」 「貴方が欲しいなんて錦君ったら! 大胆なんだから! 僕にそんな曲を弾かせなくてもいつでも君の要求をのんじゃうよ!」 「煩い黙れ早くしろ」 「も~錦君ったら~」  男は錦の腕を掴んで引き寄せ強引に隣に座らせる。 「約束だ。連弾しようよ」 「おい、ジュ・トゥ・ヴ」 「違うでしょ。君の望みはそれじゃない」
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