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置き去りにされるような寂しさが指先を鍵盤に貼りつけた。
鍵盤に手を乗せたまま俯く錦の髪と頬を撫で続ける。
「そんな切なそうな顔されると、困るな。君に悪さしたくなる」
「……終わるのが、惜しい」
そして、こめかみに柔らかい唇が触れた。
「?? 今、何」
男は笑いながら鍵盤を占領する。
何をした貴様と続けようとしたが、男の奏でるメロディーに口を閉ざす。
多少アレンジを加えながら流れるムーンリバーに、通行人が足を止める。
淡く笑みを浮かべる唇が小さく、メロディーに合わせて歌を口ずさむ。
甘美な音色に錦は夢心地になり耳を澄ませた。
―――時が止れば良いのに。
そうしたら、男の側にいることが出来る。
瞳を閉じて、男の奏でる音を取り零さない様に拾い集めた。
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