運命じゃない君が運命だった

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【後日談】 「凛ちゃんはなにしてんの?」 目の前で書類を見ていた秋斗に睨まれる。 おお、怖い。 この目で見られて平気なのは日本中探しても俺くらいだね。 秋斗は凛を下の名前で呼ぶことさえも嫌らしい。 「家にいる」 当然だろ?と言わんばかりの言い方に苦笑いする。 凛ちゃん。 秋斗に目をつけられた可哀想な子。 凛ちゃんは知らないけど凛ちゃんのお父さんも元彼たちも皆んな秋斗が凛ちゃんを捨てさせるように仕組んだんだよ。 運命の番なんてそうそう会うものじゃない。 殆どの人が会わずに一生を終えるのに凛ちゃんの周りだけポンポン出てくるなんておかしいでしょ? ちなみに凛ちゃんの運命の番に横にいた女の子。 紹介したのも秋斗だよ。 発情期に誰も一緒に過ごしてくれなかったのは秋斗が元彼たちを脅してそうさせていたからなんだよ。 万が一にも首輪を外されて噛まれたら困るからね。 あ、そうそう。 凛ちゃんの首輪。 凛ちゃんは国から支給されてるものだって思ってるけどそれは違う。 そんないい皮が使われてるものが全国のΩに支給されてたら国は破産しちゃうから。 凛ちゃんの鍵でも開かないその首輪は秋斗が持っている一つの鍵でしか開かないんだよ。 今まで外そうとしなかった凛ちゃんは知らないけどね。 秋斗は中学の頃に凛ちゃんを見つけたけどその頃秋斗には家が決めた婚約者がいた。 婚約破棄するには当主に最短距離でならなきゃいけなくてアメリカに行ってたから凛ちゃんの側にはいけなかった。 その間ずっーーと凛ちゃんを見守ってたのが俺。 見守ってた、なんて言い方だけどストーカーだね。 だからはじめましてって挨拶されたけどもう十年くらいの付き合いだから勝手に幼馴染みたいなものだと思ってる。 可哀想な子。 秋斗に目をつけられなかったら両親もいて普通のαと番って幸せになれたかもしれないのに。 「どうしたの?」 秋斗の誰も聞いたことのないくらい甘くて優しい声。 凛からだと一発で分かる。 「うん、うん。駄目だよ。今週のお休みに一緒に行くって言ったでしょう?」 小さい子が悪いことをした時に叱るような口調だ。 凛がなんて言っているのかはわからないが大体予想はつく。 やっぱり可哀想だ。 もう二十歳なのに行きたいところにも勝手に行けない。 「なに?」 さっきの電話とは打って変わって不機嫌そうな声。 「なぁんにもないけど?」 ああ、可愛そう。 でも凛ちゃんは何も知らずに過せばいい。 きっと皆んなから捨てられた自分を拾って愛してくれた秋斗をヒーローだと思ってるからね。 そんな秋斗といれるんだから凛ちゃんは幸せだよね?
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