1話 うちの売り子

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「え....っと...アルジ...??」 状況が把握できず、そう呟くと、 「ああそうだ忘れていたよ」 と彼は言い、1度白い煙を吐き出してからゆっくり 説明していった。 「自己紹介が遅くなってしまいましたね 俺はこの見世の支配人 まあ、なんとでも呼んでくださいな」 ふぅとまた煙を吐き出し、 また「そういえば」と彼は呟いた。 「で、結局誰を買うんですか?」 「あ....」 考えていなかった。 とう言うか忘れていた。 「まぁ、ここに来るのは初めてだもんなぁ.... そうだ....誰か!!ゲッカとヒサメを呼んでくれ!!!」 彼が叫んだ。 ゲッカ?? ヒサメ?? 売り子の名前だろうか。 「わかりました」と誰かが言い、 バタバタと忙しなく走っていった。 短時間で情報量が多すぎる。 考えようにも、 この景色に目を奪われてしまう。 「夢幻の国」 誰かがそう吉原のことを言っていた。 今ならそれがわかる。 「来たか」 彼の声で我に返る。 正面を見ると、 男とは思えないほど、美しい人が2人座っていた。 右側に座る男は白い髪で、腰くらいまで長い。 目は翡翠色で、白い肌、薄く色付いた唇、 両耳に付けられたピアス。 まるで真っ白な雪のような人。 左側に座る男は群青色の短く整えられた髪。 目は紫色で、こちらも白い肌、紅く染めた唇、 右目元につくホクロ。 まるで気高い夜闇のような人。
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