ヒューマンテラー

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「おはよう、そしてお誕生日おめでとう。サクラ」 「おはようございます、初めましてアリス」 地球を離れて今日で39兆213億501万7千864世紀。 「うんうん学習装置は正常に稼働してるわね」 アリスは長い髪を揺らした 「じゃあ行きましょうか」 そう差し出された手は、暖かかった 「朝食、昼食、夕食はここで。昼食と夕食の間に82号で間食を…」 「全て学習済みの内容です」 「よろしい。じゃあさっそく食事にしましょうか」 「なにを食べるのですか」 「サクラは日本人モデルだから今日は和食にしましょう」 「アリスは何モデルですか」 「わたし?わたしはイギリスモデル。さぁ食べましょう」 色のない食器をとって自然に手を合わせた 「いただきます」 ここは“ヒューマンレター” モニターを前に短い黒髪が揺れる 「制御室の基本動作はこれで全部。管理人の交換といっても学習機能に不具合がなければ教えることもないのよね」 「これは“会話”の動作チェックのようなものですから」 人間が同族殺しの果てに地球を滅ぼしてから随分と時間が経った 「ここは植物見本ホログラム、その隣が文字の電子資料、その下がXYとXX見本、」 ここは“ヒューマンレター” まだ見ぬ知的生命体へ人間のすべてを記した手紙 「これは鉱物、ん、どうかした?」 「いえ、アリスの髪はAuのようだなと」 「そうね、わたしはイギリスモデルだから」 私たちは“ヒューマンテラー” 手紙を管理し、正しく伝えるもの 「夕食はイギリス料理にしませんか」 「あら、いいけれどどうして?今日はあなたの誕生日よ」 「アリスさんは、イギリスモデルですから」 万が一にも正しさを損なわないために、ヒューマンテラーは必ず一人 そして1世紀に一日だけ2人になる 「美味しかった。ご馳走様」 「お粗末様でした。まぁ私がしたのは生産器をセットしただけですが」 「それもそうね。それじゃあ、さようなら」 「はい、お休みなさい、アリスさん」 扉が完全に締まるまで、彼女は困ったように笑っていた そして私はひとりになった
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