ろくでなし

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家が、家庭が嫌いだ。 学校にいる時にも、家庭の事──家族と比べられる話題が来ると、憂鬱な気持ちになる。具体的には、教室ならば即座に窓から飛び降りて死にたくなる。 両親は、片や、大学教授。片や、ピアニスト。 その子供は、片や、医療大学へと進学。片や……特色のない高校で、赤点ギリギリ。 これでいて劣等感を感じるなという方が難しい話だ。 親が浴びせてくる罵倒も、私には至極まっとうなものに聞こえている。 だから私はよく、夜になると海へ向かった。 身投げなどして死ぬ勇気は持ち合わせていないし、そういうつもりではない。大きな海を、水平線を眺めていると、何故か落ち着くからだ。 究明してみればきっと、世界の広さを視覚的に再認識して己の小ささを誤魔化しているのだろうが、そういう理由は些細なことだ。 海を眺めていれば、面倒なしがらみから離れることができる。 私にはその事実だけで充分だった。
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