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唖然とする彼女に、がぶり、と噛みついた。
歯が皮膚をぷつりと裂くと、血がじんわりと滲み出てくる。
──彼女の歌声が聞こえる。
天に響くほどのソプラノ。今までにない、情熱的な声。
血管がぷちんと割れると、浴びるほどの赤い噴水が吹き出す。
──やがて彼女の歌声は、泡になっていく人魚姫のように消えていった。
ここに彼女はいない。
ここにあるのは、私の夢。
「い……いただき、ます」
私が満ちていく。
小さな私が、私じゃなくなっていく。
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