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「君はとても綺麗だ」
青年は隣にいる女性の片手を取り、目を見つめて語りかけた。
静かな夜の公園でかれこれ十五分ほど、彼は彼女に好意を囁いていた。
「ありがとう」
微笑んでこそいるものの、女性の口調はどこか固い。
青年は内心でほくそ笑んだ。
この女は緊張しているのだ。もう一押しだと距離を詰める。
彼は自分がイケメンであると自覚していた。その容姿と話術を武器に、女性相手の詐欺を常習的に行っていたのだ。最初に見かけて声をかけて以来、何度か会ってリサーチを繰り返した。その結果、かなりの金を持っていると判断し、この女をターゲットに定めた。
そして今夜、この公園で仕掛ける事に決めたのだ。
「君といると心が休まると言うか、凄く幸せな気持ちになる。こんな気持ちになれる人と出会ったのは初めてなんだ」
本性を隠し、彼は甘い言葉をさらに囁いた。
「そんなに思ってくれるのね」
彼女がそっと青年にしなだれかかり、その細い腕を彼の体に纏わせようと伸ばしてきた。
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