ターゲット

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 その瞬間だった。 「そこまでだ!! 動くんじゃない!!」  突然、大声が響き渡り、白い光が二人を照らし出した。  これまでの悪事がばれたかと思わず身を竦めた。  だが、次の瞬間取り押さえられたのは女の方だった。 「え? え?」  警官らしき男の力強い腕で、青年は女から引きはがされた。  思わずもがいた拍子にすっころび、端正な顔に擦り傷が出来た。 「痛い……」 「大丈夫かね、あんた」  トレンチコート姿の男が青年を見下ろしていた。 「何事です?」 「私は刑事だ」  刑事、と聞き青年は改めて身を強張らせる。  だが、男は青年の様子を気にも留めずに続けて言った。 「痛い程度で済んで良かった。あの女は金があるふりをして、寄ってきた男を片っ端から毒物で殺していた連続殺人犯だ。今まで決定的な証拠が見つかっていなかったが、また一人ターゲットを定めたようだと聞いて張り込んでいたのだ……」  刑事は部下が女から取り上げた注射器を青年に見せた。  
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