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第7話
「こんにちは。門番の人達から聞いて、身分証の発行に来ました」
窓口には、軽装備の若い男性がひとりいた。
「身分証の発行ですね? わかりました。どうぞ中へ。こちらの椅子に腰掛けてお待ち下さい」
窓口のすぐ隣にあったアーチ型木製ドアに通されて、アンティーク調の椅子に座らされた。暫くして、部屋の奥に引っ込んでいた窓口の男性と、さらにもうひとり出てきた。
「お待たせ致しました。まず、魔力検査を行います」
そう言って、目の前に置かれたのは正方形で灰色無地の薄い石板だった。
「魔力検査?」
「はじめて入国すると偽り、新たに身分証を発行しようとする者もいますので、検査を行いたいと思います」
(偽造パスポート的な? 表向きと裏向きの顔を作りたいとかかな)
「それって、魔力検査で見破れるものなんですか?」
「はい。一般に魔法というものは、魔法学院に通うかもしくは家庭教師を雇って学ぶものなんです。
どの国の法律でも定められていますが、魔法を他者へ教える際には魔法伝授国家資格を持つ者でなければならず、その資格を持たない者が教えれば罪に問われます。資格を持ち、誰かに指南する際には国に報告書を提出しなければなりません。
人間の身体には魔力回路というものが存在し、木の枝のように張り巡らされています。
魔法は、その魔力回路に魔力を巡らせ、コントロールすることで発揮できますが、それが上手く出来なければ魔力が暴走し身体を壊したり、魔法の暴走によって周囲の人々に被害が及ぶ可能性があるんです。
また、魔力検査は魔力を測定すると同時に魔力登録をするものでもあります。ここで登録された魔力は、全国に共有されて犯罪者の動向を把握する等に役立てられます。
ということで、魔力検査をすることで魔力回路が上手く開通していない人、魔力登録されていない人が、はじめて入国する人に限られるということですよ。流石に魔力を隠す魔法は存在していませんからね」
「へぇ〜」
「どうぞ」と促されて、石板に掌を置く。
結果は、無反応だった。
(そりゃそうだ)
「魔力無し。反応、しない、ですね……」
「しない方が良いのでは……」
「生まれた時から多少の魔力はあるはずですから、逆にここまで無反応なのは珍しいですね……」
「念のため、他の石板でも試させてください」
結果はもちろん無反応。
「まぁ、魔力保有量が極小で、魔力登録出来ない人もいますから、気を落とさないで下さい……」
「いえ、大丈夫デス」
(何故か慰められてしまった……)
哀れむような目で見られて、ちょっと引いた。だって、今にも何か泣きそうな顔してるから。
いや、初対面でそんな顔をされても、どうしていいかわからないよ。
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