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橙色の夕陽が、部屋の中を染め上げる中、真白のソファーに横になっていた。
タケルは、あと2時間は戻ってこない。
いつも平日の帰宅時間は19時ごろなのだ。
駄目、と言われたときのその声色が、脳裏から離れなかった。
ただの子どもだった私は、タケルがいない隙に、外に出てやろうと考えた。
ただ、タケルが少しだけ困ればいいと、そう思っていた。
タケルがスペアキーを隠している場所は、以前掃除をして居る時に偶然見つけていた。
太陽から離れる様に玄関に向かえば、そこには私の学校の上履きがキチンと揃えられて置かれていて、久しぶりに目にした過去の私にどくんと心臓が大きく震えた。
企みを完遂しようと、世界と私とを区切る扉に手を伸ばし、シリンダーをガチャン、と回す。
すごく大きな音が響いて、身体に緊張が走った。
耐える様に己の身体に腕を回して、抱き締めながら、何カ月ぶりかに外に出た。
体温が、上がった気がした。
体感する生の空気と色、におい。
いつの間にか、秋は通り過ぎて、冬になっていたらしく、感情と共に吐き出した吐息は白く舞って昇って行く。
唇から吸い込む冬のにおいは、私の肺を満たして、身体中に染み渡った。
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