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ただひたすらに、瑞々しい外の空気に感銘を受けていた私は、スペアキーで鍵を閉めて、無意識のうちに歩き出してた。
タケルを困らせようと思ってしたことなのに、気づけば私はこの状態に舞い上がっていて、彼が帰ってくる前に、部屋に戻ればいいだろう、とそんな呑気な事を思っていた。
タンッ、と音を立ててアパートの階段を下った。
確かに私は、あの優しい世界から自分の足で踏みだした。
太陽が、私を照らした。
体温を奪う様に冬の風が私を掠めては通り越していく。
空気を掻き分けて、歩いた。
タケルはどうして、そんなにも私をあの空間から出したくなかったのか、分からないな、と思った刹那、私の名を呼ぶ声が聴こえて、振り返った。
太陽に照らされて微笑みを見せる大人は、何故だか紺色の制服に身を包んで、「警察です」と笑った。
タケルは、私をこの場所から出したくない訳じゃなかったのだ、と気が付いた。
たくさんの脅威から、護ってくれていたと、漸く知った。
タケルは、私に知られたくない事があって、だから、スマホを強請った私に、あんなに冷たく駄目だと言った。
タケルが私に隠していたのは、ニュースになっている私の事だった。
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