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私はいつも、独りだった。
黄昏と呼ばれるその時刻。
苦しい程に色が滲む夕暮れ、秋風が舞う小さな公園。
鉛丹色の落ち葉が、かさりと音を立てた。
体温を奪う様に私を掠めた秋風に揺れて、腰かけているブランコが軋んで、そうして私は私の重さを知る。
ルイボスティーの如く橙色に染められた世界が、私の身体を通り抜けていくような。
名前の無い光の粒が私を襲う感覚に、そっと目を瞑った。
ただ、舞い上がっていく葉の音だけが聴覚を支配して、私の脳裏に黄金色に色付いた赤や黄色や褐色が浮かんだ。
橙色の風に乗って、この重力から解放されて、何処かへ飛んでいけたらいいのに、と思った。
確かに近づいてくる夜の気配がして、そっと、瞼を開く。
空気を掻き分けた長い睫毛が、秋風に吹かれて冷たくなった。
嫋やかに微笑む夕陽が、私をじっと見下ろしていて、ただ幾ばくかの寂寥感を滲ませて、今その姿を建物の隙間に埋めようとしていた。
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