紡いで、繋ぐ。

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太陽が眠っている時間の癖に、とても明るい。 今の私の恰好は、学校指定のセーターに紺色のプリーツスカート、そしてたまたま持って帰っていた上履き。 黄色のラインは学年カラーなので、学校名だけでなく学年もバレる仕組みとなっていた。 たくさんの人がにぎわう駅前に、そんな私がいけるはずもなく、如何しようかと途方に暮れる。 ルビーみたいに輝く灯りに背を向けて、私は当てもなく歩き続けた。 ただひたすらに歩いていれば、ふと、私と同じ間隔の足音が付いてくることに気が付いて、少しだけ肌が粟立つ。 月に照らされた夜道は酷く冷たくて、周りには誰もいない。 意識的にその足音を聞きながら歩いていたら、無意識のうちにあの公園へ来てしまった。 大抵の時間を潰すこの場所に一日に二回も来ることになるとは思いもしなかった。 溜息交じりの笑いが零れて、私の幸せを連れて行く。 くすくす、と笑い声がして、ハッと後ろを振り向いた。 「大変、吸い直さないと幸せが何処かへ消えちゃうよ」 夜の蜂蜜に照らされて、漆黒が揺れた。 嫋やかなその笑みに既視感を憶えて、理由も分からずただひたすらに、きゅう、と胸が締め付けられた。
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