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数週間が経過して、その間私は一度もこの部屋から外には出なかった。
退屈な事など無かった。
ただ毎日、掃除をしたりご飯を作ってみたり、備え付けのプロジェクターで映画を見たりして、タケルが帰ってくるのを待っていた。
頼めば何だって買ってきてくれた。
大抵はそれでよかったのだが、スマートフォンが懐かしくなる時があった。
確かに私は毎日の様にスマホで時間を潰していた事が身に染みて理解できた。
たまに、学校などの今までの私を取り巻いていた事物を思い出す事はあったけれど、あの苦しみから逃れることが出来て、ほんとうに求めている物を手に入れた今を捨てて元に戻るなど考えられなかったし、そんな勇気も度胸も何処にも落ちてはいなかった。
「タケル」
「流華? 何?」
「ニンジン嫌い」
「いいよ、ここにのせな」
何度目か分からなくなった夕飯、今日はタケルもずっと家に居た。
タケルの休みは7日おきに2回訪れていて、週休二日制なのだな、と知った。
タケルが休みの日は恐らく土日なのだろう、この部屋に来てから日付感覚が失われていた私はそんな事を、頭の片隅で思っていた。
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