事情 1

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事情 1

 私の名は田宮(たみや)(いわ)。  私は15歳の時に(かか)った疱瘡(ほうそう)(天然痘)の傷痕(きずあと)が顔にも体にもひどく残り、非常に醜い相貌(そうぼう)となってしまった。  そんな私を心配した父、田宮又左衛門(たみやまたざえもん)は、私が17歳の時、口が上手いだけの流れ者に頼み込み、伊右衛門(いえもん)という下級武士を金で騙し、私の婿に引き入れた。  金だけが目的で婿養子に入った伊右衛門は私の顔を不気味がり、初めから私の存在を(うと)ましく感じているらしかった。にも(かか)わらず、たまに泥酔して帰って来ると、暴力的に私を犯した。 「しらふでお前なんか抱けるか・・・」 と言いながら。
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