黄昏星

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「まだ探してるのかよ。そんなのただの作り話に決まってるだろ」  ライはフィナの隣に立つと、水平線をつまらなさそうに眺めた。薄っすらと赤みを帯びていた空は、すでに藍色に染まりつくしていた。 「ほら、もう黄昏は終わりだ。帰るぞ」  フィナはため息をつくと、右側に置いてあった杖を持ち、立ち上がった。フィナの育て親が彼女に残した大事な杖だ。  並んで村へと帰りながらフィナは残念そうな、でも明るくさっぱりした顔でつぶやいた。 「黄昏星、明日こそ見つかるといいなぁ」  フィナの右手にある杖の先は地面から少し離してあり、左右に振って足元の状態を確認している。フィナはライが思っている以上に色々なことができた。視力以外の感覚が研ぎ澄まされているだけでなく、フィナ曰く“見えている”らしい。ライには意味が全く分からなかったけれど。 「星っていうのは詠むためのものなんだ。願いを叶えるためのものじゃない」  ライは星が好きだ。夜空が好きだ。星の放つ光とささやきはどれも価値あるものだと思っている。  でも、願いを叶えてもらおうとは考えたこともなかった。
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