黄昏星

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 突然、フィナが前のめりになった。後ろから押されたのだ。 「あっ!」  慌ててフィナを支えたライは、彼女の右手から杖が取り上げられるのを見た。  レギとその仲間2人だ。レギはライのいとこだが、慎重で警戒心の強いライと違い、好奇心旺盛で、仲間と一緒によくいたずらをしては大人たちに叱られていた。  レギは杖を頭上で振り回したり、隣にいる友人たちと笑い合いながら引っ張り合っている。  ライの頭にカッと血が上った。レギに勢いよくつかみかかる。あまりの勢いにレギ以外の子どもたちが横へ怯んだ。 「ら、ライ! ダメだってば!」  フィナは音と空気の動きで、何が起こっているのかを察した。大人たちが何事かと近づいてくる音もする。静止の声も届かず、ライは左手でレギの頭を掴み、右手で杖を引っ張る。レギはライを振り払い、村のほうへ逃げようとするが、騒ぎを聞きつけた大人たちの姿を見ると、とっさに常闇の森へと駆けていった。  ライはレギの後を追った。
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