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常闇の森はその名の通り、とても暗い。高く生い茂ったカカマサギの木が光をさえぎるからだ。行くのにも帰るのにも危険が伴うため、闇に慣れた大人たちしか入ってはいけないとされていた。
ライが我に返ると、すでに村の光も星たちの瞬きも届かないところにいた。
慎ましやかな光をかき集めて、なんとか周りを見渡す。少し離れたところに人影があった。
「……レギ?」
「ライだよね…?」
震えた返答に続き、草木をかきわける音と一緒に人影が近づいてくる。
杖を持ったレギにライは先ほどの怒りをすっかり忘れ、安堵の息を吐いた。薄暗い中に見えるレギの顔は不安げだった。いたずら好きのレギとはいえ、ここまで深く森に入ったことはないのだ。
左奥の方から獣の鳴き声が聞こえてきて、二人の背中に汗が流れた。
「……とにかく、来た道を帰ろう。ここにいるのは危ない」
「うん」
「その杖、絶対に離すなよ」
ライはレギと一緒に杖を握りしめた。少年たちは慎重に森の中を歩いていく。しばらく草を踏みしめる音と、か細い吐息だけが響いていた。
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