黄昏星

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「ライ、足どうなってる?」  黙りこくったライに、レギが震える声で尋ねてきた。  ライはぎこちなく笑う。こんな時に何を言えばいいのか分からなかった。わずかな間を置いて、ライは一つ嘘をついた。 「折れてはないけど、ひびが入ってるかもな。とりあえずちょっと体動かすぞ」  ライはレギの体を引きずってトギバヤの花から遠ざける。 「怖いよ」 「ほら、これもっとけ」  今にも泣きだしそうなレギの右手に、ライはミノキノコの束を握らせる。レギの顔が青白く照らされ、目元が少しやわらいだ。 「ミトロイみたいな色だ」  レギは冬に輝く大きな青い一等星の名をつぶやいた。病で死んだ者はミトロイが月に連れていってくれるのだと少年たちは幼少期から聞かされていた。   星詠みの民は、それぞれの生き方や死に方に応じて空の星たちが自分たちを迎えに来て、魂を月に連れていってくれるのだと信じていた。エウリタは弱い者を助けた者を、ミトロイは病で苦しみながら死んだ者を。普段だったら何とも思わなかったレギの一言に、ライはうっすらとした不安を感じた。  レギの左手にはしっかりと杖が握られていた。ライはどうすることもできずにうつむくことしかできなかった。いつもは悪友たちと強がっているレギだが、実際にはライより良くも悪くも子どもなのだ。 「……フィナに謝りたい」 「ああ」 「ゆるしてくれる、かな」 「……ゆるすよ、あいつは」  フィナはだれも恨まなかったし、憎まなかった。それは強がりでも偽善でもなく、フィナの“目”には村人の表面的な感情よりも星の語りかけの方が強く心に残っているからだった。ライはその心に“信仰”という名がついていることをまだ知らない。
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