オカンがオカンでいる時間

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 オトンは俺が十歳の時に天国へ旅立った。  交通事故による突然の別れだった。  その時のオカンの悲しみ度合は、当時子供だった自分には計り知ることができなかった。  それから、オカンは泣き言も言わず、女手ひとつで俺を育ててくれた。  朝早くに起き、昼は清掃員の仕事。  夜は飲み屋のなんちゃってホステスとして一生懸命働いてくれた。  俺はと言えば、中学で少々荒れはしたが、やがて真面目な普通の学生になった。  本当は中学卒業と同時に働くつもりだったが、オカンがそれを許さなかった。 「あんたは私の老後を背負って立つんやからな。ええ給料が貰えるように高学歴になっとかな、アカンで」 「老後を背負って立つってなんやねん」  照れ隠しだろうか。  ともかく、俺はオカンの希望通り、それなりの高校へ入学した。  しっかり勉強しながらも、少しぐらいは生活費を稼ぎたいと思い、アルバイトをしようとオカンに相談したが、それも許してもらえなかった。 「あんたは私の老後を背負って立つんやから、バイトなんかせんと勉強し。あと、お風呂沸かし。あと洗濯もして。あと掃除もしてといて。あと晩飯と朝飯の用意しといてくれたら助かるわ」 「P.S.が多いな」  高校生になった俺は、学生兼主婦といった具合に過ごした。  そして俺は高校三年生になった。
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